不動産コラム

2025/06/01不動産コラム
相続"税"の評価と、相続財産の評価は、ちがう。

以前、「路線価で相続人間の遺産配分をするのは不公平」というコラムを書きましたが、遺産分割に際して、相続税の評価(土地は路線価、建物は固定資産税評価額)で判断するのが正しい、という考えを述べる弁護士さんが、いまだにいるようです。

もちろん、弁護士さんは代理人に不利な主張を敢えてする必要はありませんから(それが弁護士さんの責務です)、不動産を引き受ける側(現金他の金融財産を主として受け取らない側)の相続人からの依頼であれば、そう主張することに道義的な問題はありません。

不思議なのは、本当にそれが正しい(遺産分割は、相続税評価額と固定資産税評価額を基本に行うべきである)と信じている方がいる(らしい)ことです。

当然、そのような誤った考え方は正すべきですが、「だったらなぜ国税庁は、鑑定評価をした場合と結果が異なる基準を置いているんだ。国税の評価がおかしいだろう。」という論理のすり替えを平気で言う人がいたりもします。

課税のための資産評価は、課税の仕組みと徴税の実態に即して、「公平・中立・簡素」を基本に定められている(ことになっている)ものですが、税制上そういう仕組みにしないとうまく機能しない、という事情を踏まえて"民主的"に決められているものです。評価に際して、課税の趣旨と実態に即すよう、様々な前提が置かれています。

対して、担保評価や企業の資産評価、遺産分割のための資産評価は、実体として幾らの価値が見出せるか、を見るもので、税の評価のような様々な前提を置くべきではありません。

基本的な前提が異なるのに、「あっちがこうなのだからこっちもこうだ」的に単純な主張をするのは、正直やめてもらいたいです。弁護士さんには、相続人でそう理解している人がいるときは、それが誤りである(相続税の評価 ≠ 相続財産の評価)ことをちゃんと説明して欲しい、と切に願っています。

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