権利に争いのある物件の評価
ある土地について、土地の占有者が借地だと主張し、土地の持主が貸した覚えはないと主張している場合、その土地はどのように評価すべきでしょうか。長年権利に争いのある土地を、争いを決着させるために売買する(土地の占有者がその土地の所有権を買い取る)ことがあります。
このような物件は、普通に「鑑定評価」を行って適正価格を求めることができません。なぜなら、土地の権利が確定しないため、不動産鑑定士が適正価格を判定する前提が定まらないからです。
では、このような物件が評価に適さないかと言えば、そんなことはありません。両者の主張がそれぞれ正しいと想定し、異なる2つの価格を分析し判断することは可能です。これは、不動産鑑定評価を行う場合には、対象となる不動産の権利の確定を行い、評価対象を権利の面でもはっきりさせた上で鑑定評価額を示す必要がある一方、「意見書」など異なる形式で、同一の場所の異なる権利形態の不動産を評価することは可能です。あるいは、どちらかの主張を前提に鑑定評価額を示した上で、もう一方の主張を前提とした価格を、参考価格として併記することは可能です。
売買に際しての適正な価格は、両者の間で決まりますが、具体的にどのように売買価格を決めるかは、お互いの主張に妥協点を見出す弁護士さんなどの力を借りる必要があるでしょう。
実際には、権利関係に争いのある土地は様々な原因や経過で発生しており、このように単純な事案は少ないのですが、不動産鑑定士として、少しでも紛争の解決につなげられれば幸いです。