賃貸物件の評価

I.国税庁財産評価基準における「貸家」と「貸家建付地」

1.貸家と貸家建付地

国税庁財産評価基準において、「貸家」とは、借家権の目的となっている家屋をいい、この場合の敷地部分を「貸家建付地」といいます。国税庁財産評価基準では、これらはそれぞれ独立した不動産として別個に評価額が算定されます。

2.貸家及びその敷地の算定方法

土地建物の所有者が同じで、建物を賃貸している場合、相続税や贈与税の課税価格計算の基礎となる財産評価基準では以下の式で計算されます。

  1. (1)建物

  2. (2)土地

  3. (3)土地建物一体の評価額

  1. ①「借地権割合」は、基本的には地域の標準的な借地権割合が適用されます。
  2. ②「借家権割合」は、財産評価基本通達によって、原則30パーセントとされています。
  3. ③「賃貸割合」には、賃貸中のほか、賃貸されている部分が課税時期に一時的に賃貸されていなかったと認められるものを含むこと、とされています。
  4. ④「自用地としての価額」は、その土地に係る「相続税路線価又はこれに準じたもの」に基づき算定されます。奥行・角地・不整形地などについては補正率表に基づき補正されます。

詳細はこちらもご覧ください→国税庁 財産評価

3.相続税評価額

上記の式に基づくと、建物を賃貸することで自己利用の場合と比較して相続財産の評価額を低くすることができるため、相続税対策として土地上にアパートを建設し賃貸したり、居宅を賃貸されたりすることがあります。

II.不動産鑑定評価における貸家及びその敷地

1.貸家及びその敷地

不動産鑑定評価においては、建物が賃貸されている場合には通常建物と敷地を一体の不動産として評価する、「貸家及びその敷地」として不動産を評価します。不動産鑑定評価基準における「貸家及びその敷地」とは、「土地建物の所有者が同一人であり、建物が賃貸されている場合における当該建物及びその敷地」をいいます。

2.収益価格

不動産鑑定評価では、賃貸されている不動産については、通常は土地建物一体の不動産としての賃料収入に基づく価格を算定します。これによって求められた価格を収益価格といいます。これは、貸家及びその敷地の需要者(買手)は主に賃貸収益の獲得を目的とした投資家等であり、その不動産に係る収益性が最も重視されると考えられるためです。

3.算定方法

簡単に言うと以下の式で算定されます。

  1. ①「収益」は、月々の家賃や駐車場使用料などです。鑑定評価では建物全体の空室率等も考慮します。
  2. ②「費用」は、賃貸運営に必要な経費です。管理会社に支払う管理費や、建物の修繕費用、公租公課などがあります。
  3. ③「還元利回り」は、収益不動産の投資リターンを表しています。例えば、1億円の価値がある不動産から毎年500万円の純収益(収益から費用を控除した正味の収益)が得られると予測される場合、還元利回りは500万円÷1億円=5%となります。

III.国税評価額と収益価格の関係

国税評価額と収益価格

I-2の国税庁財産評価基準に基づく評価額とII-2の不動産鑑定評価における収益価格の計算式を比較すると両者がまったく異なる計算により不動産を評価していることがわかります。国税庁の財産評価基準では、前面道路路線価や固定資産税評価額を所与として評価額を算定するのに対して、不動産鑑定評価では、賃貸借契約に基づく実際に支払われている賃料等を基に価格を算定しています。

相続税評価額(貸家+貸家建付地の価格)と収益価格の関係

(1)計算式

  1. ①「期待利回り」は還元利回りとほぼ同じものです。賃料から「価格」を把握する際に用いるのが還元利回りで、価格から「賃料」を把握する際に用いるのが期待利回りです。
  2. ②「必要諸経費」は、月々の管理費や修繕積立金、土地建物の公租公課など賃貸運用をする上で必要となる費用です。
(2)現行賃料が高い場合
上式が成立する可能性が低く、収益価格は相続税評価額を上回っている可能性が高いといえます。
(3)現行賃料が低い場合
この場合には、上式が成立する可能性があり、収益価格が相続税評価額を下回っている可能性があります。この場合には、不動産鑑定評価により、相続税評価額よりも低い評価がなされる可能性があります。

IV.利回りの計算

以下で簡単に利回りの計算ができますので、賃貸物件をお持ちの個人投資家様や事業会社の方は数値を入力してみてください。利回りの数値が低い(目安3%以下)場合には、相続税評価額は実態より高い可能性があります。ただし、ここで計算される数字はあくまで概算であり、何らかの根拠を持つものではありません。

敷地面積(㎡)
前面道路路線価又は倍率方式による価額(千円)
借地権割合(%)
賃貸割合(%)
建物固定資産税評価額(円)
月額賃料(共益費込)(円)
月額経費(概算)(円)
直近の公租公課(固定資産税、都市計画税、償却資産税)(円)

算出利回り(%)

TEL:045-222-8757(平日9:30-17:30) 不動産鑑定・土地評価に関するお問い合わせはお気軽に。平日夜・土日はお問い合わせフォームより受け付けます。

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