不動産コラム

2024/06/07不動産コラム不動産ニュース解説
投資用不動産と外国為替

外国為替市場で円安が進んでいますが(2021年のロシアによるウクライナ侵攻からずっと)、外国為替レート、というよりも外国債券の利回りと、日本の投資用不動産の価格は、大きな関連がある(と私は思っている)んですね。

簡単に言うと、米国債やユーロ債の利回りと、東京都心部の不動産の投資利回りが、均衡していなければ、なんらかの調整(市場における裁定取引)がなされる"はず"である、という考えです。

国内の金利と不動産の投資利回りの関係は、単純には説明できません。両者の差は、不動産投資のリスクプレミアムですが、投資市場が活況な時は縮小し(金利上昇又は不動産価格上昇)、過熱したときは広がるように転じる(不動産価格下落)ことが起こります。金利の低下によって不動産価格が上昇するという言説は、貸付額/貸付比率が変わらないという前提を置いているので、現実の不動産市場には符合していないと言われています。金利が低下しても、投資家は幾らでも不動産投資目的の融資が受けられるわけではないからです。

一方、外債の利回りとの関係は、国内の金利と不動産価格(投資用不動産に限ってのこと)との関係よりも単純、と考えられます。自己資金を持っている投資家は、外債に投資するか、国内の不動産に投資するか、単純な比較を行うだけだからです。外貨変動(下落)のリスクと、不動産投資のリスクを、比較するだけです。前者が大きいと判断すれば国内の不動産に投資を傾けるし、後者が大きいと判断すれば外債投資に傾ける、という単純な比較です。ポートフォリオ的には、外債の利息と国内不動産の純賃料は、ほとんど無相関ですから。

外債投資にはレバレッジがかからないが、不動産投資にはレバレッジがかかる、という理解も誤りです。現代の外債投資は、外国為替証拠金取引など、スワップポイントによるキャリートレードが可能ですし、国内の不動産投資も、対取得価格でのローン比率(LTP)は、簡単には上げられない(金融機関も甘くない)ためです。

したがって、外債の利回り(米国債10年物など)より低い利回りで国内の投資用不動産が買われている場合、何かおかしいことが起こっている、と(私は)考えます。必ず裁定が入り、外債が売られる(円高)か、不動産価格(あくまで投資用の)が下がるか、どちらかが起こる(はす)。

2005年頃、ちょうど今と同じような状況でした。米国債の利回りが4.0~4.2%、東京の不動産の投資利回りが4.2~4.5%くらいでした。日本の10年債利回りは1~1.3%、緩やかな円安も進行していました。今ほど急激ではありませんが。その後、「ミセスワタナベ」という言葉が生まれたのが2006年、サブプライムローン問題が起こったのが2007年です。

不動産市場は外国為替市場と異なり、毎日チャートで確認できるものではないので、"感覚的"に把握するしかありませんが、プロの不動産投資家は、その辺りの"肌感覚"が敏感なので、わかっているはずです。これらの点、常に情報収集に努めたいと思います。

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