不動産コラム

2024/03/26不動産コラム不動産ニュース解説
注視すべきは、住宅ローン金利ではなく、アパートローン金利

日本銀行が、2024年3月19日に、マイナス金利(民間銀行の中央銀行への過剰準備金に罰金を取る政策)を解除しました。その後、今後の住宅ローン金利の上昇を懸念する報道が増えています。住宅ローンは庶民が借りるので、そちらが話題の中心になるからでしょうか。

ですが、今後の不動産市場に影響を与えるのは、住宅ローンの金利ではなく、アパートローンなどの投資用貸付金の金利、及び貸付総量ではないかと見ています。

思い出してみてください(40代後半以上の方は)、バブル崩壊以前(1980年代)、民間人に住宅ローンを貸していたのは、(旧)住宅金融公庫などの公的機関くらいでした。庶民が近所の銀行の窓口に行って「住宅ローンを借りたいので受付お願いします」と言ったら、行員に「は?」と思われたはずです。
 それが今では、銀行の支店に住宅ローンの相談窓口があって当たり前、融資実行を取扱う支店が絞られていたとしても、「当行は住宅ローンの融資を行いません」なんて営業を限定している金融機関は、信用金庫や農協も含め稀ですよね。住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫)が保証引受などを行いますが、住宅ローンの融資はどこの銀行でも主体的に行っています。

一方、不動産投資のための融資は、「事業性資金」の金融として、金融機関は大々的に広告宣伝などしていません。金額が大きなものは、機関投資家発行の社債引受や、投資目的の法人(「ビークル」と呼びます)への特定目的融資など、かなり複雑な仕組みで融資が実行されています。個人が融資を受けるアパートローンなどは、元々は地主さんがアパートを建てるときの建設資金を融資するものでしたが、いまでは個人投資家がアパートや小規模マンションを購入する資金として融資されています。
 いずれにしても、基本的には「事業性融資」なので、銀行の営業マンが個々に案件を探し、審査部門を含め融資の是非を判断する、非常に個別性が高い融資で、大々的に宣伝はされていません。例外的にみられるのは、いわゆるノンバンク(銀行免許を後から受けた会社を含め)や信託銀行系の金融機関、あるいは不動産金融に主力を置く新興の金融機関(2000年代に外資が参入したものが多い)で、広告宣伝を見る事があります。

これらの不動産向け融資の金利ですが、年利3%を超えるものがほとんどです。融資実行の手数料も高く、実際には住宅ローンとは比較にならない高金利で融資されています。もちろん「事業性融資」ですから、個々の貸付先や投資対象の不動産の価値に依存して決まるため、一概には言えません。
 ただ気になるのは、(上場)株式投資感覚で不動産投資を行っている、個人に対する不動産担保融資の金利です。個人投資家が住宅ローン感覚で資金を借りているとすれば、その金利上昇は広範に及び、社会問題化する恐れがあります。住宅ローンと違い、不動産投資関連資金は、"プロ"が借りるものなので、その影響は事前に分かったはず、と世間から扱われますが、投資サギ的に融資を勧誘された個人も少なからずいるでしょう。金利上昇で損失を被る人も出るのではないでしょうか。

不動産投資関連の融資金利は、指標や統計が示されにくいので、裏情報も含め注意して見ておく必要があります。長期的な地価にも必ず(マイナスの)影響が出ます。

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