不動産コラム

2022/06/24不動産コラム不動産ニュース解説
円安で日本の不動産は値上がりするか?

ニュースでは連日「円安」の報道が繰り返されていますが、若い頃(学生時代)に連日「円高」のニュースを聞いていた人間からすると、なんとなく"懐かしさ"を覚えます。ちょうど、現東京都知事の小池百合子さんが、テレビ東京のビジネスニュースのキャスターをしていた頃です。いわゆる、バブル末期、でしょうかね。
 この頃は、プラザ合意(1985年)による円高→円高の抑制のための金融(実質)緩和→土地バブル、という流れの頃でしたが、当時はまだ、自身が将来、不動産を専門にするとは意識していなかったので、為替市場が不動産市場に与える影響を理解していませんでした。今思えば、その後のバブル崩壊と資産デフレのスパイラル(この頃から不動産に係るようになりました)が、起こるべくして起こったことを、後になってからやっと理解できるようになった(小泉・竹中改革の2002年~2005年頃でしょうか)のかもしれません。
 
 ところで、今般の円安は、日本の不動産価格にどの程度プラスの影響を与えるでしょうか。
 日本の銀行の不良債権処理が片付いた後、いわゆるファンドバブルによる不動産価格の上昇がありましたが、これは全世界(といっても特定の先進国と新興国)的な現象であり、サブプライムローン問題の発生とリーマンショック(2008年)まで続きました。2015年頃から過度な不動産価格の下落から回復し、東京都心など一部では地価上昇に転じましたが、全国的な地価の下落傾向(不動産需要の減退)は続いています。
 そんな中で、"記録的"な円安が起こっていますが(円の独歩安)、円安により、日本の不動産が、外国から見れば割安になっていることは確かです。東京では高層マンションが珍しくなくなりましたが、高層マンションの床単価は、ニューヨークや上海のそれらと比較しても割安です。一方で、投資物件は、その利回りの源泉である賃料そのものが円安により下がっているので、日本の投資用不動産が利回りの面で割安に(投資利回りが良く)なっているわけではありません。そうすると、円安により日本に流れて来るのは、"投資マネー"ではなく"爆買いマネー"になるかもしれません。
 不動産の購買マネーは、欧米からだけでなくアジアからもやって来ます。2014年頃でしたか、中国の人に札幌のマンションを買ってもらう取引に関わったことがありましたが、コロナ禍からの回復後は、この手の買手が増えるかもしれません。日本人には馴染みがありませんが、海外のお金持ちは、物件を見ずに不動産を買うのは普通のことなので、日本に誰も来ることなく知らぬ間に日本の不動産が外国人の手に渡っている、ということが起こると考えられます。日本は、外国人にも土地の完全所有権を認める、というある種特異な国なので、外国人に注目される地域の不動産が、知らぬ間に売れて上がっていく、という現象が起こるでしょう。
 
 外国人に注目される日本の地域とはどんなところでしょうか。メトロポリス東京、大阪はそうですが、京都や富士山周辺、北海道のニセコやオホーツクなどいろいろ考えられます。外国の映画に登場する地名、というのは一つの参考になるかもしれません。不動産は現地を案内して契約を取るのが当たり前、という常識も変わって行くでしょう。資料や映像を見せて気に入ってもらい、現地案内をせずに契約をする(ただし解除条項がたくさん)、という取引スタイルも定着するかもしれません。

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