不動産コラム

2021/05/18不動産Q&A不動産コラム
共有地の分割は難しい。

相続などで、宅地が共有になることはよくあることです。共有の状態になると、売却や賃貸の際に共有者の同意が必要になり、その売却代金や家賃などの収益も、共有の割合で分けなければなりません。何より、共有の土地を共有者の1人が独占的に使っていると、本来は他の共有者に共有持分割合に応じた対価を払わなければならないはずで、その金額が幾らなのかが問題になります。
 
 共有の土地のを単独所有にするために、共有持分を買取る(共有を解消するために対価を支払う)のであれば、その共有持分の価値は、全体の土地の価値の共有持分割合になるので、答えは簡単です。
 実態としては、共有解消のための土地取引の価格は、単純に共有持分割合にならないことがあるようですが(共有者が早く処分したいので安くなるとか、共有解消のプレミアムがついて高くなるとか)、これは、共有者間の事情に因るものなので、共有地を評価する際に、共有であるからと言って高くなるとか、安くなるとかということはありません。あくまで、単独所有前提の評価額を求め、それに共有持分割合を乗じた価格を、適正価格と判断します。

ところで、共有地を分割して、複数の単独所有の土地とするために、鑑定評価を行うことがあります。下図のような例です。
図2.png

例えば、ある土地が、2/3:1/3 の共有であったとします。この土地を2つに分割して、それぞれ単独所有の2つの土地とする取引を行なうとします。これは交換に当るので、金銭の対価は原則として発生しません。実際には、差額調整のために代金が支払われることが多いのですが、原則は対価の授受なく土地を交換する取引を想定します。

このとき、土地を単純に面積比2:1に分割すればよいものではありません。土地は、その利用の便利さ、有用性に依り単価が異なるためです。上図で言えば、a地とb地の面積を、1:2に分けても、a地の価値がb地の価値に対して1:2にはならないため、決して"公平"な分割にはなりません。
 対価なく分割するためには、上図で言えばPa:Pb=1:2にするように目指せばよいわけです。が、これが結構難しく、分割を考える土地の物理的現況や周辺環境、あるいは現在の土地利用の形(建物がどう建っているかとか)に合わせて合理的に分割しなければなりません。不動産は、単純に価格が数量に比例する財産ではなく(株や貴金属と異なる)、その有用性によって価格が決まるため、有用性を低めるような不合理な分割をしないようにしなければなりません。

この点、土地の形体や市場の実態によって、Pa+Pb>Pc(分割した方が全体として高くなる)になるときもあれば、Pa+Pb<Pc(分割することで、全体が安くなってしまう)になるときもあります。宅地分譲がよく行われる地域では前者の場合が多く、中心市街地の商業地域などでは後者の場合が多くなります。あるいは、a地とb地のどちらかが、著しく使い勝手が悪くなってしまうような場合(狭小になるとか、接道条件が悪くなるとか)、後者のケースになると考えられます。

このように、共有地の分割は結構難しく、そもそもどのように分割すべきなのか、土地の評価に先立って考える必要があります。

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