不動産コラム

2024/01/31不動産コラム不動産Q&A不動産ニュース解説
「バブル」か「インフレ」か

不動産の価格が値上がりすると、エコノミストから「バブルの懸念」という言葉が聞かれるのは、いまに始まったことではありません。「バブル経済」という言葉が使われ始めたのは、1990年代前半です。「インフレ」という言葉は、その前からありました。経済学の用語ですから当然です。
 では、「不動産インフレ」ではなく「不動産バブル」という言葉が、日本国内だけでなく、海外でも使われるようになったのは、なぜでしょうか。これは、両者に概念的な違いがあるのではないか、と考える経済学者が増えてきたためです。

なにが「バブル」で、なにが「インフレ」なのか、明確な定義はありません。ただ、「食料品バブル」などという言い方はしない以上、消費財には「バブル」は成立しない、というのが標準的な理解です。一方、「原油高バブル」と言われることがあるように、原材料、特に先物市場などがある産品には、「バブル」という概念は成立し得るようです。

この点、私なりの理解なのですが、「バブル」とは何か、それは『異時点間のゼロサムゲーム』です。

財の「市場」にはいろいろなものがありますが、青果の卸売市場のように、ゲーム性がないものもあれば、FX(外国為替証拠金取引)のように、完全なセロサムゲームもあります。株式市場は、最後は企業の長期利潤に行き着くという意味で、短期ではゼロサム、長期ではプラスサムのゲームと言えるでしょう。
 この点、「市場」でその時点で消費されるものの需給だけで取引される限り、バブルは生じ得ません。なぜなら、その時取引されたものは消費されこの世からなくなるので、純粋に売手と買手の駆け引きだけで価格が決まるからです。
 一方、買ったものを再び売ることのできる市場(株式市場や商品先物)は、将来売れると"見込まれる"価格が現在の価格に反映するので、バブルが生じ得ます。すなわち、将来に価格が上昇すろと見込む人が増えて、そう思わない人が現物資産を売る、という取引が成立すると、いわゆる「バブル」が生じる、と考えられます。そうすると、将来価格が上昇すると見込む人が減り、転売益が見込まれなくなると、「バブル崩壊」に至る、ということになります。これは、実需の需給ギャップによる値下がりとは、様相が異なります。
 では、なぜ「バブル崩壊」が問題になるのでしょうか。それは、資産の購入に際して買手が借入を行うことが多いからです。日常の消費財であれば、そもそも取得者が取得資産を担保に借入を行うことがないので、値下がりは単なる価格調整です。しかし、売手が借入を行っていると、借入残高を下回る価格で売却を余儀なくされることになった場合、資金の貸手に不良債権が発生し、世の中全体で信用収縮が始まるからです。なので、「バブル」は社会問題を起こすわけです。
 ゼロサムゲームは、誰かが得をすれば誰かが損をするわけですが、そのゲームに参加している人が理解し合っている限り、社会的な問題は生じません(博打を許してよいか、という"宗教的"な問題はあるかもしれませんが)。しかし、そのゼロサムゲームが異時点間で行われると、ゲーム参加者は皆得をした気分になる一方、その損は将来誰かが必ず被ることになります。なので、「バブル」は崩壊する前にしぼめなければならないわけです。

不動産の値上がりが、「インフレ」(実需の需給の逼迫)か、「バブル」(将来の誰かの損を現在の利益にしている)かは、とても判断が難しいですが、「バブル」とはなにか、は理解しておく必要があるかと思います。

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