不動産コラム

2020/07/10不動産コラム
所有者不明の土地は解消できるか

全国の所有者の判らない土地について、7月3日、「所有者不明土地等対策の推進のための関係閣僚会議」が開催され、解決のための
"工程"が示されたようです。
http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/shoyushafumei/index.html

この件、不動産関連のニュースにもなっていました。
https://www.re-port.net/article/news/0000062743/

そもそも、なぜ土地の所有者が分からなくなってしまうのでしょうか。主たる理由は、3つしか考えられません。

1.土地を持っている人が、自分が持主であることを知らない。

2.土地を持っている人や、もらった人が、要らないと思っている。

3.土地を使っている人が、持主から何も言われないので、その土地を持とうと思わない。

1は、相続で生じることが多く、知らないうちに親兄弟から土地をもらっている例です。その親自身(被相続人)も、土地の持主であったことを知らないこともあるので、そうなってくると、相続が発生するたびに持主が分からなくなります。
 2は、価値がなく引取り手のいない土地で生じます。お金とちがい、土地は運べないので、寄附を受け付けてくれる人も少なく、管理がなされない土地が増えます。
 3は、所有者がその土地の遠方に住んでいる場合などに生じます。土地を使っている人が、その土地をもらう動機も生じないので、所有者と使用者が異なったままです。他人からみると、土地を使っている人と土地の持主が異なり、持主が分からなくなります。

日本では、土地の権利移転について、登記が「義務」ではないので、登記をしなくても罰せられることはありません。取得者には登記する「権利」があるのであり、登記しなくてもいいや、と思えば登記しなくても良いのです。仮に、もらった土地の値段が、登記の手間代より安ければ、登記する価値はない、と考えるでしょう。権利を譲り受けたこと自体は間違いないので、権利を得た人が登記しなくてもよい、と思えば登記されないのです。登記がされないことで、土地の登記簿を見ても誰のものかわからない土地が増えてしまいます。
 持主の分からない土地は田舎に多いのですが、都会でも少なからずあります。多くは、狭過ぎて使い道のない土地です。また、持主は個人だけでなく法人もいるので、所有する法人自体の実体が分からなくなっている、とか、実は持主が国や自治体なのに、管理主体がはっきりせず"所有者不明"になっているものもあります。

要するに、土地の持主が分からなくなるのは、そもそもその土地が持主にとって使い道がないからであって、大切な土地であれば、他人から見て「所有者不明」のまま放置するはずはないのです。それだけ、日本の"土地"に価値が見出されなくなっている、ということではないでしょうか。

 ちなみに、所有者不明になり易い山林や農地の取引の媒介には、宅地建物取引業の免許は必要ありません。逆に言うと、宅地建物取引業者は、農地や山林の取引に慣れていません。土地の問題でありながら、町の不動産屋さんではよくわからないので、相談する相手もいない、というのが持主の本音ではないでしょうか。

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