不動産コラム

2023/11/06不動産Q&A不動産コラム
路線価で相続人間の遺産配分をするのは不公平

土地の価格に関し「路線価」と呼ばれるものはいろいろありますが、代表的なものは、国税庁の財産評価基準路線価、いわゆる「相続税路線価」があります。相続税路線価は、相続された資産(現金等の金融資産を含む)の一部が土地(または借地権)であった場合、相続税の課税対象になるか(課税最低限を上回るか)、なるとしたら幾らの相続税を納める必要があるか、の算出の指針として公表されるものです。

この「相続税路線価」ですが、その道沿いの"標準的な土地"について、それが更地(建物等の定着物がなく、使用収益を制約する権利が付着していない宅地)であった場合の土地の1㎡当りの単価(単位:千円/㎡)が示されています。この数値は毎年更新され、1月1日時点の単価が、毎年7月に公表されます。

ところで、相続される不動産は、現況が「更地」であることは稀です。個人が持っている土地ですから(法人には「相続」がありません。法人の株式は相続されますが)、未利用のまま放置されることは少なく、大体は土地上に建物があるか、建物がなくても駐車場として貸されるなどがされています。土地上の建物も当然相続財産ですが、建物が単独で価値をもつことはないので(∵土地がなければ建物が存在できない)、建物の価値は土地(借地権を含む)と一体で把握されます。

これについて、相続"税"の申告に当たっては、土地は相続税路線価を基本に、建物は固定資産税評価額を基本に、価格を把握して申告していいですよ、というルールになっています。相続税路線価は通常、近傍の公示価格の8割程度を目途に査定される仕組みになっているので(平成4年以降)、多くの場合、不動産市場での取引の実態からみると安めになります。
 ですから、相続"税"の申告上は、不動産の時価評価を行うよりも、路線価を参照した方が有利になることが多く、路線価の単価を一部補正して土地の価格を求め、相続税の申告額を算定して申告するのが一般的です。あるいは、相続税の申告をしなくても良いことを確認します。

そうすると、相続税の評価額を"正"として相続人間で財産を配分してしまうと、不動産市場における市場価格よりも低くなることが多いので、不動産を相続する人に有利(市場価格より低い分、現預金などの他の金融資産の配分が多くなる)に働きます。
 もちろん、相続財産の分配である限り、相続人間で納得(合意)さえすれば、どのような配分をするかは、相続人間の自由です。最終的には、遺産分割協議において、全者が納得する結論に至れば問題ありません。
 しかし、不動産を相続する相続人が、「相続税申告での不動産の価格がこうだから」という理由で、他の相続人(多くは兄弟姉妹)に不動産以外の相続財産の分配を主張するのは誤りです。他の相続人に不利な主張をすることになります。

また、遺産の分配である限り、故人である被相続人の遺志(遺言)が基本になりますし、相続に係る他の事情も考慮されるべきでしょう。また、その不動産を承継する重要性が、他の相続人と異なる(実際にそこに住んでいるとか、お店など稼業を継ぐとか)こともあるでしょう。
 ですが、まずはその不動産の"時価"を把握し、他の相続財産と同列に比較できるようにすることが重要です。

このような場合、是非不動産鑑定をご検討ください。不動産の相続対策というと、相続"税"の節税ばかりに目が行きがちですが、相続人間で揉めないように、生前に不動産の情報を整理しておくことも意義があります。事情によっては、簡易査定でも対応可能な場合もあります。遺産分割協議に係る(であろう)弁護士さんや司法書士さんからの御照会(紹介)も歓迎いたします。

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