借地がなかなか売れなくなっている

「借地権」と一言に言っても、いろいろな借地の形態がありますが、ここではいわゆる「旧借地法上の借地」「普通借地権」について述べます。借地権の態様は、下図をご覧ください。

(現借地借家法)

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借地権の評価をどのように行うかは、不動産鑑定士の間でも諸説ありますが、借地権がなかなか売れなくなってきている、という事実は全国的な傾向としてあるようです。

借地権の価格の指標として、国税庁財産評価基準路線価による「借地権割合」があります。国税庁がインターネット上で公開している、「路線価」を示す地図の路線価の数値に、A~Gの符号が付されています。相続税と贈与税の申告に当って、相続対象資産、贈与資産の価値を判定する際の指標とされます。借地権割合が60%の場合、その土地の更地としての評価単価(あくまで相続税課税上の1m2当たり単価)の0.6倍が、借地権の単価とみなす、というものです。

ここで、仮に対象地の路線価図にある「借地権割合」が60%とされているからといって、その土地が路線価の0.6倍で売れることを意味しません。そもそもなぜ借地権(土地を借りる権利)に価格が付くのでしょうか。

日本の借地借家法では、借地期間が満了になった場合でも、借地人に退去してもらい土地を返してもらうには、地主さんには"正当事由"が必要です。

借地借家法 第5条

借地権の存続期間が満了する場合において、借地権者が契約の更新を請求したときは、建物がある場合に限り、前条の規定によるもののほか、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。ただし、借地権設定者(注:地主)が遅滞なく異議を述べたときは、この限りでない。

借地借家法 第6条

前条の異議は、借地権設定者及び借地権者(転借地権者を含む。以下この条において同じ。)が土地の使用を必要とする事情のほか、借地に関する従前の経過及び土地の利用状況並びに借地権設定者が土地の明渡しの条件として又は土地の明渡しと引換えに借地権者に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、述べることができない。

この"正当事由"が無条件に認められることはほとんどなく、通常の場合、相応の立退料を支払う必要があります。借地人は少なくともその借地を地主さんに返すときに立退料を受け取ることができるので、その対価分は借地権の価値の一部と言えます。

また、バブル経済以前は、借地の地代は毎年一定で、更新に当っても急激な値上げは認められませんでしたが、地価は継続的に上昇していたので、借地権者に対価を支払ってでも、土地を利用する権利を取得する人が大勢いました。土地を借りる権利は法で守られており、譲渡も事実上可能なため、対価を払って借地権を譲り受ける人が多かったわけです。つまり「借り得」で安定して借りられる権利に対して経済価値が生じたのです。また、前述の通り、国が課税財産としての価格の指標を示すので、取引に際しても借地権が有償と認識されるようになりました。

このように、借地権は有償で取引されて当り前、という状況が日本の土地取引の実態としてありますが、最近ではその"常識"も変わってきました。バブル崩壊後地価が下がっても地代が据え置かれるケースが多く、借地権を取得する人から見ると、借地を承継して高い地代を支払うのに、なぜ現借地人に対価を払う必要があるのか、疑問を持つ人が増えています。土地賃借権には抵当権が設定できないため、銀行が担保価値を低めに捉える傾向もあります。ローンが借りにくく、かなり割安でない限り、わざわざ借地権の物件を買う理由がないと見做されがちです。地方都市では、借地上の建物に価値があるだけで、建物がなくなり借地権だけとなった場合、有償で引き受ける人は稀です。地代を払うのが嫌で、建物を取壊して地主さんに土地を無償で返す人も現れ始めています。

ただしこれは、地価が下落を続けている一般の住宅地の話で、中心市街地では全く状況が異なります。東京の銀座や横浜の中華街などでは、未だに借地が多く残っていますが、これらの地域での借地権は、土地を借りる既得権としてまだまだ高額な資産価値があります。

なお、やや専門的になりますが、借地の価値と底地(借地権の設定されている土地の所有権)の価値を合計しても、更地としての価値に一致しません。下図をご覧いただき、詳しくは弊社までお問い合わせください。


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