不動産コラム

2023/06/19不動産Q&A不動産コラム
「損失」の評価はできても、「損害」の評価は難しい。

不動産鑑定士が示す鑑定評価額は、基本的には「時価」であり、買ったときに金額からどれだけ変動したか(取得価格と時価の差額)、買ったときの金額が妥当だったか(過去の取得価格と当時の時価の比較)、を判断するための資料として有用です。
 ですが、時価が取得価格より低く「損失」が生じていることを示せても、それが所有者に生じた「損害」に当たるかどうかは、判断が難しいものです。
 
 例えば、4,000万円で買ったマンションが、評価したら評価額が3,000万円だった、とします。確かに、所有者は今売ったら1,000万円の損が出る、ことは事実なのですが、これは、市況の変化によるものなのか、建物が古くなったからなのか、もともと4,000万円の価値がなかったのか、いろいろな理由が考えられ、かつそれらが複合的に作用しています。
 このため、売主に騙されたとか、だれかから家を壊されたとか、元々壊れるような家だったことが後からわかったとか(地盤を含め)、そういった事情による「損害額」の算定には、不動産鑑定士はあまりお役に立てないな、と感じています。「時価」を判定したとして、取得価格と時価との差額が、加害者に対する損害賠償請求や、公的・私的な補償のための「損額」額とは、単純に判断できないためです。
 
 こういった事情の場合、不動産鑑定士としての鑑定評価ではなく、建築士としての調査報告のような形でお手伝いした方が有用ではないか、と考えております。例えば、建物や外構に破損や欠損が生じた場合、あるべき状態に回復させるために要する費用が、「損害」の一部(大部分)として把握できるでしょうし、もともと瑕疵があったような場合、瑕疵のない状態にするには幾ら掛かるか、が「損害」の額の指針となるでしょう。
 難しいのは、周囲の環境の変化により(予定を含む)対象地の価値が棄損するようなケースです。例えば、高層ビルや嫌悪施設により、日照や通風、景観が損なわれるような場合です。このような場合、補償理論(理論といっても法的な主張ですが)の中で判断されるのですが、どのような数値化が可能なのか、依頼主(多くは弁護士さんですが)と相談して判断してゆくことになります。

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