FGKコラム

2015/06/30不動産コラム
大規模修繕による長寿命化

現在の建物を新築に建替えることと、現在の建物を大規模修繕により長寿命化することと、どちらが適切であるかは、建物の現状と、建替え費用や大規模修繕に要する費用との関係で決まります。どちらが有利であり、どちらが適切であるかは、次のような概念で比較することができます。

fig150630_1.gif

まず、建物は経年で劣化して行きますが、同じ性能を維持するだけでは、事後保全(壊れたら治す)にしろ、予防保全(予め壊れそうな箇所を交換しておく)にしろ、十分ではありません。時間の経過とともに、新築時よりもより高い性能が常に求められるため(例えば、耐震性能や空調・衛生器具の必要性能の向上、環境対応、バリアフリー対応など)、建物に必要とされる本来の機能との差が広がり続けます。このため、現在の性能を維持し続けても、いずれ建替えが必要になります。

上図の黄色の矢印の高さは、現在の機能が維持されたとしても建替えが必要となる場合に、必要とされる建設費と取壊し費用の合計額を意味します。ある時点の建物の機能と、新築した場合に実現できる機能との差が、建設費と取壊し費用の合計額を上回ったとき、建物を新築する方が有利であり、かつ建替えが必要となることを意味します。

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仮に、安全上最低限必要とされる修理以外には何もせず、建物の物理的劣化を放置したとしても、一定期間はその建物を利用することができます。建物の建替え予定が明確な場合は、修理をくり返して維持し続けるよりも、建替えを前提に現在の建物を使い続けることが考えられます。

したがって、建替えの時期を明確にせずに現有の建物を維持し続け、修理・修繕をくり返すと、修繕コストばかりが嵩み長期的には不利になります。このため、老朽化している建物については出来るだけ早く、建替えを行う時期と予算を決めることが重要です。建替えを行う時期を決めることで、その時点で必要とされる規模や、付加的な機能なども早い段階から検討に入ることができます。

fig150630_3.gif

一方、大規模修繕による建物の長寿命化は、次のような考え方です。建物の物理的劣化だけでなく、機能面の劣化にも対応する改修を行うことで、建物の機能を向上させ、いまある建物を長期で使用し続けることを意味します。大規模修繕を行っても、新築する場合とまったく同機能を実現することはできないので、新築する場合の機能との差異(上図の紫の部分)は広がり続けますが、それが新築に要する金額を上回らない限り、建替えを行う必要はありません。

ただし、大規模修繕の費用が定期的に生じるため(上図の赤の矢印の額)、長期のライフサイクルで見ると、建替えを近々に行うよりも大きな金額を要します。場合によっては、大規模修繕費の合計額が、建替えに要する金額を上回ることも考えられます。したがって、長寿命化がコスト面で常に有利とは限らず、建替えを行う時期を先延ばしする効果しか得られないことがあります。

実際には、現有建物の機能と要求される性能の開きは、単純な曲線で広がるわけではなく、災害による破損や法規制の変化への対応など、予測が困難な面もあります。しかしながら、建替えと大規模修繕による長寿命化は、一概にどちらが有利・不利ということはなく、その建物を維持する必要性と、維持にかかるコスト、建替えに要する金額との関係で決まります。

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